トップ->レビュー

神樹の館

ロミオ信者のu-taより勧められた作品。
ロミオの中でもかなりマイナーな作品らしく、聞いたことすらなかった。「メテオ」という発売メーカーも知らんかったしね。星空めておプロデュースの会社で すか?(違
メーカーの公式サイトから紹介が消されてるが、雰囲気的には館モノのミステリーと云ったところか?


評価

今回はいきなり評価です。
あまりの面白さに作品に引きこまれすぎて、すっかりプレイ中の感想を面白おかしく記述するのを忘れてました。

シナリオ
グラフィック
サウンド
システム
20
8
7
10

シナリオ

民俗学を専攻している主人公・工月秋成は卒業論文の資料を集めていた。そんな折、数少ない友人の一人である四ツ谷麻子から、自分の親類の家の真珠邸が役に立つかもしれないと紹介され、山奥にそびえ立つ洋館へと足を踏み入れる。
その館にはメイドの紫織と双子の少女・斎と伊美、姿を見せない館の主人の4人しか住んでいなかった。
夜。慣れない枕に寝付けない秋成は遠く狼の遠吠えを聞いた。雨は二人を屋敷に閉じ込めるかのように降り続く。

ロミオ氏の博識はいつもながらに、不気味な雰囲気を漂わせる館の雰囲気とキャラクター達の言動は、物語の真相究明へとプレイヤーを駆り立てる燃料となり、 主人公の行動の必然性や選択肢が絶妙にシンクロし、ストレス無く作品にのめり込み、ノンストップでエンディングまで持って行ってしまう活力となる。
また、各キャラクター事に展開が180°・・・とまでは行かなくても120°近く様変わりするので、そのたび真相へと近づこうと意欲を駆り立てられた。
真相の終わりというのは非常にありふれたものだったが、ロミオ氏が何度も描いてきた物であり、恐らく彼が物語に一番込めたいメッセージでもあるのだろう。

一般的なエロゲーと違い日常パートを描く必要もなく、作品として起承転結のメリハリがしっかりしており、ルート攻略にかかる時間は長くないが、それでいてキャラクターの特徴を滲ませることにも成功している。
テキストの感じは普段から小説なんかを読まない人には少し堅めに見えるだろう。エロゲーに置いてこの硬さというのは非常に珍しいが個人的には好ましい部類である。しかし、この作品が一般受けしなかった理由でもあるのだろう。

グラフィック

立ち絵、背景共に和、洋の2パターンが存在し、かなりの枚数があるので力の入れ具合は半端ないように感じる。
絵は可愛いけど残念ながら上手いと言えるレベルではないですが、見せ方が非常に上手いと思う。
自分は紫織さんは眼中に入らないタイプのキャラでありながら、CGの構図が良くて魅力的に感じるような場面が幾度かあった。

サウンド

雰囲気を尊重し、暗い不安にさせるような音楽が多い。
洋館時の日常音楽はどこか壮大過ぎて洋館というよりはお城みたいな印象に感じてしまったのは残念。
好きな曲は「Synapse」と「危険なセレナード」。

システム

2004年当時でありながら、現在でも通用するものではないだろうか。
いや、まぁ、メニューバー操作なので現代っ子には馴染みない仕様ではあるだろうが。
処理は非常に軽快で、セーブデータにテキスト記述できるというのは非常にありがたい。
また、屋敷捜索時はマップが表示されるなど、建物を視覚的に認識しやすい配慮というのもありがたく、地味に演出に繋がってる辺り憎らしい。

総評

小説らしいゲーム作品

最近のゲームはプレイしていると選択肢を誘導されている感覚がどうしても、頭の片隅で感じてしまっている。それというのも、女の 子を攻略するということを前提に作られており、謂わば初めに女の子の小説を選んでいるようなものだと自分は認識している。その過程にある選択肢というのが 最近では女の子を選ぶための作業としか機能しなくなっているため、選択肢に誘導性を感じてしまっている。
しかし、この作品はそういった誘導されている感覚は全く無い。自分の選択が物語を変えているような錯覚を伴うように作品が展開されている。
BADENDにも作品としての意味があり、やりなおしたいという選択肢を選べば冒頭からやり直すことが出来る。そんな作品だ。
しかし、その冒頭からやり直せるという行為がゲームとしてのシステムではなく、物語として機能しているというのが凄い。

小説を複数の方向性に展開し、様々なエンドを見せておきながら一つの元に収束させるという、ゲームであるから上手く描ける設定を生かした小説らしいゲームと言えるだろう。